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「motif」井上愛さん

2021年6月に開所された生活介護事業所「FLAME(フレーム)」で、motif代表の井上愛さんが手がける新たなものづくりについて取材をさせていただきました。 愛さんは、おからドーナツでおなじみの「特定非営利活動法人ひょうたんカフェ」の副代表として、これまで未利用素材をはじめ様々な布を生かし、織り機での生地制作・商品企画・販売など、障害のある作り手と共に、手しごとにこだわり、おしゃれなモノ・コトの事業展開をされてこられました。廃棄される糸から生地を織り、ポーチやブローチにすることもありました。


障害のある織り手の着たい服を利用者さん自らで織り上げ、ファッションショーで披露するなど、どの企画も奇想天外で愉快でワクワク、楽しくって生き生きしています!そんな愛さんが、新たな地域「豊山町」で、その地域の魅力や特徴を生かして、障害のある方々と、ものづくりをする場「FLAME」を作り「福祉×ものづくり×地域」をテーマに活動をされています。


FLAMEの建物の真ん中に置かれた「デジタル刺繍機」。これまでの手織りの織り機で縦糸に横糸を編む「手作り」から、ここでは「デジタル」を導入し可能性をさらに広げています。その使用する素材の糸が尾州の糸であったり。。。まさにここはラボ。この実験室での柔軟な環境が多様な化学反応を生み出し、進化して行くこと想像します。そんな柔らかで自由な発想が生まれるための、安心できる環境。FLAME(フレーム)は福祉サービス事業所であると同時に「近所のものづくりの場」でありたいとのこと。新たな企画として「近所のお直し屋さん」事業も育てられるようで・・・続きはインタビューで。      

                         

guest

井上愛さん(NPO法人motif 理事長)

地域の生産物や技術と障害のある人がつくるものが、プロダクトになり「かわいいね。面白いね」で繋がることをミッションとし、2021年6月、愛知県豊山町に、生活介護事業所「FLAME」を開所。デジタル刺繍機、手仕事、アップサイクルをテーマとした地域のものづくりの場を目指している。


interviewーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 聞き手:原田さとみ 2021年 9月


井上)現在はNPO法人motifの理事長です。障害福祉の現場には、30年くらい携わり、現在は、管理者とサービス管理責任者という立場です。地域や見学の人には、ここは(福祉施設ではあるけれど)ものづくりの場所です、とお伝えしています。また、ものづくりでは、ディレクションの役割をすることもあり、福祉とメーカーや会社を繋いだり、企画を他の福祉事業所へ提案するような役割もしています。


原田)福祉をアートで繋いでいますね。今日着ているお洋服も?


井上)手しごとの中にも、その人らしさが現れていてほしいと思っています。それがアートというのかはわかりませんが。。。今日のシャツも、隠れたところに玉止めがたくさんあって、作り手の個性が表れていますね。


原田)福祉とアートのモノづくりをミックスさせてきた愛さんですが、最近ではそのような活動が広がってきていますね


井上)福祉のアート作品のような個性があふれる「もの」で「ひと」が繋がるシーンを見られるのは嬉しいことです。どうしても障害者、福祉と聞くと、こうあるべきとか〜言っちゃいけないなど、ハードルが上がってしまいますが、まずは「おいしい」「かわいい」「面白い」で繋がって、実は障害のある人が作ったものなのだったんだね〜、という世界が広がっていけばいいなと思います。


原田)新しく豊山町に作業所をオープンされましたね。ここから目指すことはどんなことでしょうか


井上)拠点を決める際には、紆余曲折していました。ものづくりが好きで、伝統産業にも興味があるので、尾州や有松のような産地でできたらな、と思っていましたが、条件的に難しいことが重なってしまい、一時場所探しを停滞することもありました。そんな時、知り合いから、豊山町には日中の福祉事業所がないんだよ、と聞きました。ならば、やってみようか!となりました。

そして豊山という場所を大事にしたいし地域につながりたいという思いが、ますます強くなりました。


原田)今までは「ひょうたんカフェ」で福祉施設の中でのモノづくりなど様々なチャレンジをされてきましたが、今回こちらの「FLAME」を開所されたことで、新たなスタートをされているのかなと思いますが


井上)ひょうたんカフェは手織りでもの(商品)をつくっています。そこでは商品を通して手織りの温かみや織り手の思いを伝えられたらいいなと思います。このように一つの福祉施設で作って売るまでの工程を担うやり方は、福祉施設ではよくあることです。


しかし、一つのところで全てを担うのは大変なことです。そこで、もっと他の人たち(地域や、企業の方々)と一緒にものづくりができないのかなという思いがずっとありました。福祉施設同士が繋がること、福祉施設と企業や地域と繋がること、それを目指すこと。その辺りを目指しているのがFLAMEです。


原田)「デジタル刺繍機」という新しい手法も取り入れていますが、どんな構想があるのでしょうか


井上)まだ始まったばかりで間もないのですが、今やろうとしていることを図にまとめていました。


原田)真ん中にある「彩」とは何でしょうか?


井上)「彩sai」とは名古屋にある田島工業で製造されているデジタル刺繍機です。

・まずは、「障害のある人」との結びつきのところ

障害のある人の書いた絵、イラストをモチーフに、デジタル刺繡で刺繍します。

例えば、クラウドファンディングのリターンとして皆さんに提供している軍手の絵も障害のある人の絵がデジタル刺繍機によって表わされています。


・自分の書いた絵がデジタル刺繍機ですぐに形になる喜びを体験できます。

・将来的に新しい仕事として刺繍機を使った仕事も考えており、生産活動としてデジタル刺繍機が使われるという可能性を感じています。


・続いて「豊山町地域」との繋がりという意味では「彩sai」を使ってお直し屋さんをしたいと思っています。古いものをよみがえらせたい、ものを大切にしたいというコンセプトがありますので、破れたところをデジタル刺繍でお直しすることを考えています。

最近ではご近所の方から、この地域の渋柿を提供していただきました。その柿を皆で絞って、今、柿渋液を熟成させているところです。実際に柿渋で染めた生地や糸を染めることもできるかもしれないです。


・その他にもボランティアや内職もしたいという声もいただき、そんな時にも「彩sai」が一役買ってくれるかなと思っています。


・そして「クリエイター」との繋がりについて

今後は地域のさまざまな作家さんとも繋がって、またデジタル刺繡があることでラボ的に使っていただき、実際にこの場所でものづくりをしていただくことも考えています。

作家さんは、比較的柔軟な考えで障害のある人の手仕事やアートをうまく取り入れてくださるのでものづくりのヒントをいただけるかなと思っています。


・続いて企業やメーカーさんとの繋がりについて。

企業やメーカーとはブランドづくりをしたいと思っています。サンプルや小ロットの依頼をデジタル刺繡でできるかなと思っているところです。


原田)「彩」が入ってきたことで色んな広がりが期待できますね。

福祉とアートをミックスさせて、そこに地域のモノづくりが繋がり、クリエイティブに人が繋がる場になっていくということですね。


井上)そうですね。そしてこの中で自然と福祉ってなんだろう、関心を持っていただくようなメッセージもあります。


原田)愛さんは今までも障害のある方々の表現の場を作ってきましたよね。

街に出る、社会に出るということを大事にしてきたと思うのですが。


井上)自分が作ったものが、実際に人(お客様)に繋がったり、お客様の声を聞けるような機会を大切にしてきました。


原田)素材として注目しているのが廃棄される素材や未利用素材などの捨てられるものだったりしますよね。その素材の力って何でしょうね。


井上)素材のメッセージ性が高いのだと思います。

例えば、まだ商品化はされていないのですが有松絞で絞ったあとの糸とか。関西の古繊維業にて廃棄されるはずのウールの服で新たに糸にしたものを使って、いくつかの手織りをしている福祉施設がと制作に携わる取り組みもしています。


原田)軍手の素材がそうですか


井上)軍手の素材はまた違いますが、軍手の素材は廃棄されるはずだった尾州の糸ですね。


原田)それに目を付けた理由は何ですか。


井上)軍手を製造している福祉施設ではアップサイクルという意識は持って見えませんでした。随分昔から扱っていた素材なんですが。。。


原田)ということは昔から廃棄せずに素材を循環させていたのですね。


井上)そうですね。思いもよらないものができていますよね。たまたまここでは地味系で揃えていますが、構わず、軍手なのに、色んな色が混ざっている偶然の面白さがありますね。


原田)最後に、この活動で社会をどう変えていきたいですか


井上)言葉で伝えるというよりは、ものでメッセージを伝えることを大事にしていきたいと思います。伝わるスピードとしては遅くて、曖昧な伝わり方にもなります。

まずは感覚で、「いいな、かわいいな」で手に取っていただき、背景を知っていただいて、一層愛おしくなるようなものづくりをしていきたいなと思いますし、障害のある作り手と共感したいなと思います。



「アップサイクル」インタビュー完成のお披露目イベントに

「motif」さんもトーク!

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エシカル&サスティナブル・ファッションショー/ トーク@オンライン

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2022年 1月 22日(土)13:00~16:30(オンライン配信)

オンライン(ファッションショー/トーク/ 中継)

参加:YouTube配信 https://youtu.be/Sj2a3_u_N4M


1/22イベント詳細はこちら!



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interviewer

原田さとみ

(エシカル・ペネロープ株式会社 代表 / 一般社団法人 日本フェアトレード・フォーラム代表理事 / NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)理事 / 一般社団法人 日本エシカル推進協議会理事 / JICA中部オフィシャルサポーター)

”思いやり”のエシカル理念・フェアトレード普及推進イベント、フェアトレード&エシカル・ファッションショーの企画運営。 フェアトレード商品やエシカル消費・エシカルライフの推進事業を行う。2015年名古屋市をフェアトレードタウン認定都市とする。


movie

松井陽介(pen&wine Paw代表)


writer

梅澤ルミ子 (結日代表 / NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)理事)

エステティシャンとしての経験を積み、2018年『結日』起業。生産環境、製造環境、使い終わったあとまでを考えた石鹸等の日常生活に馴染みやすい化粧品・洗剤等の商品展開をスタート。主にアジアを中心に生産者に寄り添った現地の素材を活かし原料化し、美容界にもサスティナブルな商品の導入を目指している。

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