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「LIG(ライガ)/ 船橋株式会社」 舟橋 昭彦さん、大谷 真奈美さん


大正10年から続く、創業100年という歴史ある、防水衣料メーカーの船橋株式会社さんを訪問しました。

防水作業服・エプロンの製造を行う船橋株式会社さんで、新たなアップサイクル事業を立ち上げたということです。お話をお聞かせくださったのは、三代目の舟橋昭彦社長さんと、入社4年目「社長のミギウデ」という興味深い肩書の大谷真奈美さん。役職も世代も離れたこのお二方が、新事業の立役者。社長と若手が意見を自由に語り合える会社だからこそ、生まれてきた新事業は、時代に必要とされるかっこいい企画です。

船橋株式会社さんでは、80代の職人さんも20代の若い方々も、幅広い世代の女性たちも、のびのびとお仕事されていらっしゃいます。皆さんの得意を生かして、手仕事を大事にし、熟練技で仕立てられる防水作業服は、優しく逞しく、お客様の身体を危険や汚れから守る、とても「タフ」な製品です。そんな「タフ」が新事業にも生かされています。「豊田合成x異種格闘技ALIVEx松デザイン」のコラボで生まれたアップサイクル事業「LIG(ライガ)」について伺いました。                  



guest 

舟橋 昭彦さん (船橋株式会社 代表取締役)

大学卒業後、名古屋の繊維商社に入社。1994年に家業に戻り、2002年に大正10年創業のカッパ屋の三代目社長に就任する。「快適・安全・清潔」をスローガンに消防団向け高視認カッパや血に強いカッパ型エプロンなど企画販売する。2020年は不足する医療用ガウンをトヨタ自動車様の支援の下、東海エリアの中小企業6社と約1000万着を生産し厚労省、病院に納入する。2021年、創業100周年を迎える。


guest 

大谷 真奈美さん(船橋株式会社 社長のミギウデ 兼 企画開発課 サブリーダー)

北海道室蘭市出身、大学進学を機に名古屋市在住。南山大学総合政策学部卒業後、社長のミギウデとして新卒採用、広報、新規事業開発など幅広い業務を担当。なかでもコロナを機に開発した医療用防護ガウンの取り組みが多くのメディアに掲載されたことからトヨタ自動車の生産支援を受け、生産数は当初の100倍にまで増加。トヨタイムズのテレビCMにも取り上げられ大きな反響を生む。



interviewーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー聞き手:原田さとみ 2022年1月


原田)どんなアップサイクル事業がスタートしたのでしょうか。


大谷)今回製作している商品は、エプロンとバッグが中心のアイテムです。こちらは自動車のエアバックから出てくる端材や、シートベルト、カーシートの革の端材を組み合わせて作っている商品です。捨てられてしまう素材のみを使用しています。


原田)愛知県にはトヨタ自動車があり、エアバックやシートベルトなどの端材が出るのですね。エアバッグ素材などは、車が廃棄される際に取り出される未使用のものを使っているのでしょうか。


大谷)それではなくて、私たちはエアバックにはなれない素材を使用しています。エアバックになる前の素材もたくさん廃棄されるということを聞き、使用しています。

エアバックは安全基準が大変厳しく、検査基準を満たさなくて製造の段階で弾かれる素材がたくさんあります。それが捨てられてしまうといことがもったいないという思いです。シートベルトも同じように長さに達しなかったものが廃棄されるので、それを分けていただいたり、カーシートの革も残った部分だけを使用し、バッグのパーツとして使用しています。


原田)ビニール素材やゴム素材などの厚手の素材の縫製が専門である船橋株式会社さんだから扱うことのできる素材ですね。


大谷)ミシンもたくさんありますし、比較的、厚物を取り扱う事が得意なので強みを活かせるということと、全ての長さや大きさが違う素材を扱うことができる小さな工場で、さらには手作業だからですね。新入社員から80代の方まで元気に働いています。工場では多くの女性が活躍しています。一つ一つ異なるサイズの素材を全てデータ入力し、管理していますが、手作業で細かな対応ができるということが、端材を捨てずに生かすアップサイクル事業を可能にしています。


原田)このプロジェクトは、3団体「豊田合成x異種格闘技ALIVEx松デザイン」のパートナーシップということですが、その内容を教えてください。


舟橋)豊田合成さんからエアバックの端材やシートベルト、本革シートの端材を供給いただき、染色メーカーさんで染色、加工しております。主な特徴としましては豊田合成さんとデザイナーの松デザインさん、異種格闘技ALIVEさんと我々船橋の企業という、規模や業種の違う4つの会社がそれぞれの強みを持ち寄って1つの商品にしているのが特徴です。


原田)たくさんの方々が関わるのが最大の魅力ですね。格闘技団体のALIVEさんとは、どのように、アップサイクル企画につながったのでしょうか。


舟橋)総合格闘技道場ALIVEさんは体を鍛えるだけではなく、健康経営で名古屋市や企業と一緒にフィジカルだけではなく、メンタルもトータルで経営コンサルをしている会社です。K-1やRIZINでなどでチャンピオンを多数輩出しながら、一般の方向けにもフィジカルだけではなくメンタルも健康にしていこうというSDGsに取り組まれています。その志が合った4社でプロジェクトを作っていこうということになりました。


大谷)このバッグの名前は『Tough Bag(タフバッグ)』です。生地の特性の「丈夫さ」であったり、体の大きい方や鍛えている方が使っても「大丈夫」という意味も込められていますので、ALIVEさんは、商品のイメージに合っていて、アピールの場でも活躍してくださっています。


原田)ブランドイメージにピッタリ!ということですね。では、松デザインさんとはどんな関わりからでしょうか。


舟橋)プロダクトのデザインはもちろんの事、コンセプト設計です。

今回のアップサイクルのテーマは『伝統と革新』です。日本に長くから伝わる染めの手法、100年の縫製技術、新しい素材のエアバックを組み合わせたモノづくりが特徴です。


原田)染め加工において、どのように伝統をプラスしたのでしょうか。


大谷)商品においては表と裏で違う柄が出ています。シワ、カスレが上手く出るように染色のメーカーさんと相談しながら再現しています。


舟橋)日本の伝統技術の「かすり」や「絞り」のテイストをエアバックに施しています。また、染ムラが出るのも一つの特徴としています。日常で乱暴に使ってほしい、少々汚れてもそれもデザインになるような商品です。


原田)まさに『タフ』ですね。本業では合羽やビニール素材のエプロンをつくっている船橋株式会社さんとしては、凹凸のない素材を用いて、加工でも汚れやムラ・しわがあってはならなかったと思いますが、今回はガラッと異なるテイストですね。


大谷)普段はフラットな素材を扱っていますが、今回の素材はシワ加工があり、裁断の面でも、加工の面でもものすごく苦労があり、現場では「なんて難しいモノをデザインしてくれたのだ」という声が入ってきたこともありました。シワがあることにより真っすぐ切ることができなかったり、ミシンで縫う際も真っすぐ縫うことができないといったトラブルもありました。

原田)白いエアバックは未使用だから汚れていなくてきれいなのかなと思いますが、それをあえて染めたのですね。


舟橋)アップサイクルであっても、このまま作っても付加価値が出ないですし、ただのリサイクルだけでは使っていただくことが難しいと思います。そこをいかに価値を高めるか、街やアウトドアで楽しんで使っていただけるモノづくりをするにはどうしたらいいかということを検討しました。


原田)価値を上げていくアップサイクルなのですね。白い生地にシワ加工がオシャレということで白い商品が人気と聞いていますが。


舟橋)染料を使わないという意味では白が一番サスティナブルですね。

ですが一番人気はカーキ、黒ですね。

原田)商品の評価をリサーチするためにも、販売先を広げることは大事ですね。それも卸ではなく、自分たちで実際にデパートなどで販売もされているということですね。それは本業とは違うことですが、嬉しさと学びも多いのでは。 大谷)そうですね。基本的に通常ははB2Bですので、自分たちでお客様の顔を見ながら反応を聞き販売していくことは今までなかったことですので、すごく新鮮で、お客様に届いていることが実感できて嬉しいです。どのように自分たちの技術を伝えていくかは接客をする中で学んでいっているところですね。

原田)社長、社員さんの学びとして、いい実践の機会でもありますね


舟橋)お客様の声を聞いてモノづくりに生かすことは、とても大切なことだと改めて感じました。


原田)昨年、創業100年を迎えられ、まさに節目の時。アップサイクル事業は、三代目社長として新しいことをしようという気持ちの現れですか。


舟橋)はい。100年で大きな節目になります。もう一度、船橋株式会社の原点、会社の存在、ミッション、バリューをしっかりと捉え、これからの100年に備えるため、いろんなプロジェクトを進めています。


原田)これからアップサイクル事業を進めることで、会社がどのように変わっていくでしょうか。


舟橋)今回、ブランドビジョンを設定しました。「滴(てき)の中で輝けるために」。「滴」のテキと「外敵」のテキを掛け合わせました。合羽やエプロンはハードな現場で働く人達が使うものです。例えば、警備員、道路工事、消防団の方々などハードな現場で働く人達をヒーローのように生き生きと輝かせたい。そのためには我々が何をしなければいけないのかを考えることが会社の存在意義ではないかと考えています。


原田)優しく身を守る衣類を作っているということですね。たくましいですね。


大谷)そうですね。私たちも一緒にブランドビジョンを考えて、会社でどんなことを担っているのか、仕事をしていてどんな瞬間が一番嬉しいのかを書き出した上でまとめたブランドビジョンですので納得しています。

原田)これから若手からこの会社を通してやっていきたいことはありますか。


大谷)数年前からアップサイクルには注目をしていました。メーカーとしてモノづくりをする際にどうしても端材がでてしまうので、これをうまく利用できたらいいなと考えていました。100周年の節目にご縁が集まって今回の事業に立ちあがったと思っています。


原田)時代を変えていく力がありそうですか。


大谷)そうですね。まだまだ浸透していないところもあるかと思いますがアップサイクルだから使うというよりは、この商品がかっこいいからとか、気に入って使うというところから入ってもらえたら嬉しいですね。


ブランド名の「LIG(ライガ)」とは、「命を守る布」というエアバックのキャッチフレーズから、ライフガードの頭文字をとっています。「LIG(ライガ)」のブランドビジョンは、地球との共生、伝統と革新、命を守る布の進化系が商品になることがテーマになっています。


原田)「LIG(ライガ)」も商品は、どちらで購入できますか。


舟橋)今は名古屋市内の東急ハンズでの期間限定の催事などで販売しています。名駅ミッドランドのマルシェでも販売を予定しています。


原田)船橋株式会社のサイトで催事の予定を確認できますね。


大谷)はい。Facebookで発信しています。


舟橋)そして、また新プロジェクトも考えています。「LIG(ライガ)」は4社でコラボしたブランドですが、私たち船橋株式会社の新ブランドも考えています!


原田)楽しみですね!ありがとうございました。


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interviewer

原田さとみ

(エシカル・ペネロープ株式会社 代表 / 一般社団法人 日本フェアトレード・フォーラム代表理事 / NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)理事 / 一般社団法人 日本エシカル推進協議会理事 / JICA中部オフィシャルサポーター)

”思いやり”のエシカル理念・フェアトレード普及推進イベント、フェアトレード&エシカル・ファッションショーの企画運営。 フェアトレード商品やエシカル消費・エシカルライフの推進事業を行う。2015年名古屋市をフェアトレードタウン認定都市とする。


movie

松井陽介(pen&wine Paw代表)


writer

梅澤ルミ子 (結日代表 / NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)理事)

エステティシャンとしての経験を積み、2018年『結日』起業。生産環境、製造環境、使い終わったあとまでを考えた石鹸等の日常生活に馴染みやすい化粧品・洗剤等の商品展開をスタート。主にアジアを中心に生産者に寄り添った現地の素材を活かし原料化し、美容界にもサスティナブルな商品の導入を目指している。


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