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「poco up poco/ほほほ」後藤美和さん

フェアトレードとエシカルのお店「ほほほ」を経営する株式会社 大醐のアップサイクルブランド「poco up poco(ポコアップポコ)」。資源を再利用する持続可能な循環型社会を目指して開発。再生ペットボトルと自社の天然シルク素材を組み合わせた糸や、廃棄されるコーヒー豆の袋を再利用した文具など、自然環境に配慮のある循環型商品を生み出しています。


「ほほほ」店内には、日本各地の伝統素材・製法・職人技を活かした品々の他に、東南アジア、インド、アフリカからのフェアトレード商品など、世界の文化や伝統、作り手の想いを感じられるエシカルなアイテムが並びます。株式会社大醐は、1981年にアパレルメーカーとして創業。「日本の伝統技術や産業を守ること」を大切にしながら、服飾雑貨を製造・販売。ステテコや靴下など、あまり目が向けられない日用品にデザイン性や良質な素材を取り入れることで、業界No.1の商品を多数生み出してきました。


大醐が大事にしてきたことは、

①生産地の歴史や背景を学び、生産者の想いを理解し商品と共に物語や想いをお客様に伝えていくこと。

②一過性に終わらせず、継続的に雇用を生み出していくこと。

③日本の物づくりを守るために、伝統に今の新しい価値観を加えて行くこと。


このように日本国内の物づくりを守ってきた大醐が、視野を世界に広げ、フェアトレードの商品開発を行い、同時に、工場で残った素材や、廃棄される素材に注目し、アップサイクルの商品開発も手がけています。大醐が大事にしてきた日本の物づくりと、途上国の生産地を守るフェアトレードと、ゴミをなくし自然環境を守ることは、同じ思い。


「誰が、どんな想いで作ったものかを大切にしていきたい」。それが、株式会社大醐の物づくりの原点とのこと。現在、名古屋市内に2つの直営店を持つ「ほほほ」さん。今回は「ほほほ 星ヶ丘店」を訪ね、新規アップサイクル事業についてバイヤーの後藤美和さんにお話を伺いました。

Guest

後藤美和さん(株式会社大醐 店舗事業部バイヤー)

https://daigojapan.jp/ フェアトレード・エシカル商品の買付けや途上国でのエシカル商品の企画・開発にも携わる。アップサイクル工作教室「トナリの学校」副校長として、学生たちと連携しアップサイクルの 啓発・普及活動を行う。NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク理事。2030SDGs公認ファシリテーター。



interview ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 聞き手:原田さとみ 2021年 9月


原田)「ほほほ」、可愛い店名ですね。


後藤)こちらは星ヶ丘テラスにある、フェアトレードかつエシカルな商品を集めたセレクトショップです。「ほほほ」という店名は、「ほっとする、ほっこりする、ほんもの、日本の「ほ」など、たくさんの「ほ」を集めて、みなさんが思わず “ほほほ” と笑顔になれるような、そんなお店になれたらいいな、という願いが込められています。


原田)こちらの店内のやさしい雰囲気、誰もが“ほほほ” になれますね。さて、新しく立ち上げられましたアップサイクル・ブランドについてお話をお聞かせください。


後藤)poco up poco(ポコ アップ ポコ)、アップサイクルのブランドです。イタリア語で「少しずつ」という意味を持つpoco a pocoという言葉の“a”をアップサイクルの“up”に変えて名付けました。「地球のために少しずついいことをしていこう」という意味があります。


原田)アップサイクルに注目した理由は何ですか。


後藤)SDGsなど世界的な目標の達成に向けて、私たち企業もより一層主体的かつ積極的に環境問題に取り組むべきであると考え行動に移した、その第一歩がこのブランド開発です。例えば、カラフルなこのバッグ、何からできているかお分かりになりますか? 

実は、フィリピンのレジ袋です。フィリピンのゴミ問題が非常に深刻であることは周知の通りですが、その大量のレジ袋やお菓子の袋をまずは洗浄し、手で細かくカットして、広げて、熱圧着のローラーをかけて、このようなシート状にしています。もともとの素材感や色、デザインなどを活かしつつ、南国フィリピンらしさがあって、見ているだけで何だか楽しいですよね。これを輸入し、ここ愛知でバッグを作っています。このシートを私たちは「プライシクル・シート」呼んでいます、プラスチックとリサイクルを掛け合わせて。


原田)poco up pocoは、一枚のシートとの出会いから始まっているのですね。しかし、これをバッグに仕立てるというアイデアを実際の製作へと繋げていく過程は、簡単ではなかったでしょう。


後藤)そうですね。この少し硬いシートを縫うことのできる縫製工場さんを探すのが課題でした。が、もともと弊社はアパレルメーカーとして40年以上の経験と実績、そしてネットワークがあります。かつ愛知県はモノづくりの地ですから、数々の協力メーカーさんに恵まれ、結果として商品化を実現しました。プライシクル・シート以外にも、バッグ本体にペットボトルの再生ポリエステルを使用していたり、持ち手の革の部分に食肉用の牛の副産物である廃棄処分する皮を使ったり。金具以外はすべてエコなアイテムで仕上げています。


その上で、見た目の可愛らしさも忘れずに。優しく、楽しく、そして、使いやすく。ポケットもちょうどスマートフォンが入るサイズですし、ブランド開発の大前提として当然ですが、使う人の立場にたった物づくりは徹底して行なっています。


原田)これまでは、メイド・イン・ジャパンを大事にされ、日本のモノづくり、日本の工場さんを応援されてこられましたが、今後はさらに途上国支援と連動としてアップサイクル、フェアトレード、エシカルファッションの分野へと広がりそうですね。


後藤) そんな品々をどんどん増やしていきたいと考えていて、アイデアは尽きないんですよ。靴やバッグの製作に使用した表革を剥いだ後の裏革(バックスキン)のパターンで試作したり、コーヒーの袋や麻袋、お米の袋やセメントの入っていた袋などの活用方法を考えたり。これまで意識せずに捨てていたものも、よく見ると実は可愛いかったりユニークだったり。最近は、ほんの小さな包装紙さえも捨てるのが惜しくなり、もう見るもの全てが愛おしくて、何かに使えるんじゃないか? と日々考えるようになりました(笑)


原田)ゴミ箱に入れるものをゼロに近くしたいですもんね。

後藤)その通りです。ゴミがなくなると同時に、それがかわいい商品に生まれ変われば、たくさんの人に喜んでもらえるでしょう? そんなアイテムが一つのきっかけとなって、未来ある若い人たちが環境問題に目覚めてくれたら、本当にうれしいです。若い人と言えば、小さなお子さん向けのイベントもしているんですよ。名城公園でのアップサイクル工作教室、お子さんやお母さん、そしておばあさま世代の方々までたくさん来てくださって、いつも好評を頂いています。


原田)参加されたお子さんたちの反応はいかがでしたか。


後藤) 子どもたちは、ゴミという意識がないので、先入観なく何もかも新鮮な素材として受け止めてくれて、逆に、私たちの方が学ぶことが多かったですね。あ、そう来たか!という使い方を子どもたちから教えられて。一方、そのイベントで使う素材を提供してくださる企業さんからも「気づきが多く、視野が広がった」という感想をもらいました。



そして、企業と子どもたちとの間に入って奮闘してくれたボランティアの学生さんたち。高校生や大学生のみなさんが、私たちの活動に対して高い関心を持ち、たいへん積極的に協力してくれました。まさに世代を超えた学び合い、分かち合いのできるイベントとなっています。


原田)アップサイクルの広がりを実感しますね。この一番の強みは何だと思いますか。


後藤)やはり、できあがったものは「世界にたったひとつだけ」という特別感だと思います。包装紙一枚でも切り取る場所によって色や柄が変わるでしょう? どこにもない、誰も同じものを持っていない、自分だけのもの。それがアップサイクル商品の大きな魅力だと思います。フィリピンから届くプライシクル・シートも、最近は文字やバーコードが入った食品の包装袋などが増えていて、どんどん楽しいデザインになってきていますよ。


原田)この活動はアップサイクルの分野にとどまらず、フェアトレードの分野でもありますね。


後藤)そうですね。働きがいや雇用問題、ジェンダー問題にも関わってきますので、poco up pocoのものづくりが、ゴミ問題解決の一助になりつつ、若者や貧困層の女性たちの就労支援にも繋がり、非常に意義のある活動になっていると思います。実際に、フィリピンの作業所では、今回新たに20人の雇用が実現したそうです。特に学校に行けず職にも就けていなかった25歳以下の若者が多く、約1ヶ月のトレーニングを経て採用されたと聞き、とても嬉しく思いました。ひと、もの、環境、全てにおいていい循環が生まれてきていますね。


原田)それは国内においても?


後藤)一例として、poco up pocoのタグがあります。これはフェアトレード認証のバナナペーパーの端材ですが、印刷機にかけるとき、どうしても端っこは印刷できなくて余ってしまう。せっかくのいい紙も、端っこの部分は、これまで捨てるほかなかったのです。ですが、私たちはまた、逆転の発想です。印刷機にかけられないのなら、手でスタンプを押せばいいんじゃない? ということで、それらをカットして手作業でタグを作ることにしました。

すると、このスタンプを押す、という仕事が新たに生まれ、福祉作業所や就労支援施設への発注をまた一つ増やすことができたのです。タグを止める紐も、弊社のシルク製品の製造過程で出るシルクの残糸。このようにすべてが有機的につながっているのです。


原田)アップサイクルの浸透によって「ゴミは必ず出るもの、であればどんどん活用していこう」という方向に考え方が変わってきていますね。


後藤)本当に、いい流れが生まれつつあります。実際、工場さんから提案していただくことも増えましたし、今まで捨てるしかなかったものに若干でもお値段がつきますので、それがまた工場さんの利益に繋がり、環境にいいものをどんどん企画して作って頂く、という理想的なサイクルができてきています。これこそが私たちの目指す社会です。


こうして、10年後20年後30年後の地球のために、責任を持って考え、行動できる大人が少しずつ増えていくことを願っています。一人ずつ、少しずつ、でも着実に変わっていくこと。その動きを止めないこと。それがいつか大きなエネルギーとなって、世界を、未来を、よりよいものに変えていけると信じています。そのちいさなきっかけを提供できる場として「ほほほ」があり、かわいらしいpoco up pocoのアイテムがあります。ぜひ一度、「ほほほ」に遊びに来てくださいね。



「アップサイクル」インタビュー完成のお披露目イベントに

「poco up poco /ほほほ」後藤さんもトーク!

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エシカル&サスティナブル・ファッションショー/ トーク@オンライン

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2022年 1月 22日(土)13:00~16:30(オンライン配信)

オンライン(ファッションショー/トーク/ 中継)

参加:YouTube配信 https://youtu.be/Sj2a3_u_N4M


1/22イベント詳細はこちら!



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interviewer

原田さとみ

(エシカル・ペネロープ株式会社 代表 / 一般社団法人 日本フェアトレード・フォーラム代表理事 / NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)理事 / 一般社団法人 日本エシカル推進協議会理事 / JICA中部オフィシャルサポーター)

”思いやり”のエシカル理念・フェアトレード普及推進イベント、フェアトレード&エシカル・ファッションショーの企画運営。 フェアトレード商品やエシカル消費・エシカルライフの推進事業を行う。2015年名古屋市をフェアトレードタウン認定都市とする。


movie

松井陽介(pen&wine Paw代表)


writer

梅澤ルミ子 (結日代表 / NPO法人フェアトレード名古屋ネットワーク(FTNN)理事)

エステティシャンとしての経験を積み、2018年『結日』起業。生産環境、製造環境、使い終わったあとまでを考えた石鹸等の日常生活に馴染みやすい化粧品・洗剤等の商品展開をスタート。主にアジアを中心に生産者に寄り添った現地の素材を活かし原料化し、美容界にもサスティナブルな商品の導入を目指している。

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